思いがけずして叶った願望についての話
藪から棒ではあるが、いま私は極めて稀有で奇跡的な状況にある。
前提として、衣食住が満たされていて、五体満足であるだけで私は幸せだ。
その上の精神的充足は人生のボーナスゾーンだと捉えている。
つまり私はいまボーナスゾーンで生きている。
最近はそんなボーナスゾーンのさらに上を生きている気がする。
・・・・・
高校生の頃、私は商品開発という仕事に憧れた。
高2の夏、学校で社会人による講演会が行われた。
その場で広告業界で働く人の話を聞いた。
「人が1日にどれだけの数の広告を見ているか知っていますか?なんと3000もあるんですよ」
初めて知る世界でワクワクした。
それから広告業界について調べた。
そうすると、普段何気なく使っているものや食べているものは、広告に限らずたくさんの人のアイデアと努力が詰まったものだと知った。
そこで疑問が湧いた。
「なぜ働く人たちはこんなに頑張っているにも関わらず、人々の不満はこの世からなくならないのだろう?」
そしてこう思った。
「広告は伝える手段である。そこでいかに伝えるかをどれだけ考えたとしても、伝えるものの質が悪かったら意味がないのではないだろうか?であるならば、良いものをもっとたくさん作ればいいはずだ。私は将来、自ら商品開発をして世の中から不満をなくしたい。」
なんとも純粋な高校生であった。
学部のいろんな教授に会っては商品開発がしたいと語った。
そしてその度に聞かれた。
「なぜ商品開発がしたいのですか?」
その問いに答えると、教授たちはさらに「なぜ?なぜ?」と問うてくる。
(めんどくさい…)と思った。
しかし、自分でも今一度なぜ商品開発をしたいのか考えてみた。
理由はシンプルだった。
「自分がもっと幸せになりたいから。そのためには自分のまわりを幸せにしなくてはいけない。幸せな人に囲まれることが自分の幸せにつながる。そうして幸せを広げて世の中をより良くしたいんだ。」
そう考えると、商品開発じゃなくてもいいことに気付いた。
何の仕事でもその想いは叶えられるんだ。
途方に暮れたまま大学4年生になり就職活動が始まった。
自分のやりたいことなんてわからなくて途中で就活をやめた。
運良く、卒業直前に就職先が決まった。
なんと、入社後もしばらく気づいていなかったのだが、就職先は商品開発をメインに行なっている会社であった。
・・・・・
私は昔から無類の唐揚げマニアである。
実家では、料理上手な祖母に「何が食べたい?」と聞かれたら、いつも「唐揚げ!」と答えていた。
誕生日も運動会もクリスマスもお正月も。
我が家のおせちには唐揚げ重が存在する。
よく、「好きを仕事に」と聞く。
かつての私は思っていた。
「好きを仕事にって言ってもそんなに上手くいくもんじゃないよ。そんなの、限られた一部の人にしかできないことだ。」
でも。
いま私は、好きを仕事にしている。
なんと、唐揚げ好きが高じて、唐揚げに関する仕事をしているのだ。
しかも、唐揚げの油分と水分を吸収して美味しさをキープする吸油ペーパーを作って売るというなんともマニアックなところを突いている。
このペーパー、イチから自分で作った。
「こんなペーパーを作りたい」と思って、特許を取って、工場に「作ってください」とお願いした。
そうしてできた。
もうすぐ商品として納品される。
・・・・・
・かつて夢見ていた商品開発という仕事をした(している)
・好きが仕事になっている
こんなに奇跡的で幸せなことがあるだろうか。
潜在的に感じていたことが意図せず叶った。
同じような体験をしたことのある人がこの世にどれだけいるだろうか。
そう考えると、本当にありがたさしかない。
この世の全てに感謝したい。
それと同時に世の中に対する使命感も感じる。
まわりから受け取っている幸せを返していきたいし返していくべきだ。
2022年11月17日時点で、私は人生に対して何の不満もない。
よく、「悩みがないことが悩み」だと言う人がいるが、不満がないことはまったく不満ではない。
新たな気づきである。
果たして、私の人生はどこまで発展するのだろうか。